研究概要 |
目的:放射線による脳壊死出現を早期に診断するための指標として、proton magnetic resonance spectroscopy(^1H-MRS)が有用であるかどうか検討した。 方法:猫をketamineとchlorpromazineを用いて麻酔した後、頭部を固定して照射及び^1H-MRSを行った。照射には12-MeVの電子線を用い、1.5×2.0cmの照射野で、最大線量部で60Gyの1回照射を施行した。^1H-MRSには1.5TのMR撮像装置を用い、直径3インチの表面コイルで信号を収集した。First spin echo法で冠状断の撮像を行い、両側の脳半球にそれぞれ1ccの関心領域を設定して^1H-MRSを行った。用いたシーケンスはPRESS法で、TR=2000ms,TE=136msの条件で計測した。^1H-MRSは照射前と照射の0.5,1.5,2.5,3.5,4.5,5.5ヶ月後に施行した。照射による脳障害の指標としてcholine-containing compounds(CH), creatine-phosphocreatine(CR),N-acetylaspartate(NAA)を用いた。実験に用いた猫の一部は、1.5,3.5,5.5ヶ月後に屠殺し、組織学的な変化について検討した。 結果:照射された白質は、照射の3.5から4.5ヶ月後にT2強調画像で異常高信号を示した。照射された部位では、対側の比照射部に比べてCH/CR比が著明に高値となり、NAA/CR比は減少する傾向が認められた。これらの変化はMR画像での変化が出現する1ヶ月以上前にみられた。T2強調MR画像での高信号領域の組織学的変化は、壊死と脱随であった。 考察と結語:今回の検討結果では脳壊死がMR画像で検出されるようになる前に、^1H-MRSでの脳代謝産物の割合に変化が認められ、放射線治療後の重篤な脳障害である脳壊死を早期に検出するための有効な手段となる可能性があると考えられる。
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