研究概要 |
本研究の目的は胸部集団検診で撮影された画像に対して,結節状陰影の検出を中心とした集団検診用コンピュータ支援診断システムの開発を行うことである.コンピュータ支援診断とはコンピュータによる画像処理技術を駆使して,病巣候補陰影の自動検出あるいは病巣陰影の特徴量計測を行い,医師が画像診断の際にコンピュータの分析結果を"第2の意見"として参考にしながら最終診断をする手法である.具体的には,従来の結節状陰影の検出アルゴリズムを改良し,さらに,集団検診で前年度に撮影された画像(過去画像)と今年度に撮影された画像(現在画像)間の経時的差分画像で病巣の変化を強調する基礎的試みを行い,次の成果が得られた. 1 結節状陰影を高感度で検出する画像処理アルゴリズムの改良. マッチドフィルターを基本とする多様なサイズの結節状陰影のコントラストを強調できる新しいフィルター,および,形状特徴量による候補陰影の拾い上げ,絞り込みの手法を開発した.最終的に,200例の胸部写真(100例に結節状陰影あり)に本手法を適用した結節状陰影の検出率は真陽性率79%,平均偽陽性率1.7個/画像が得られた. 2 経時的差分画像技術の基礎的研究. 画像の平行移動,回転および変形を伴う差分像技術の基礎的研究を行った.基礎研究で開発した手法を876症例の過去および現在画像に適用したところ,76.7%の症例でアーチファクトの少ない経時的差分画像が得られた. 3 胸部集団検診において撮影された画像データベースの構築. 平成8年度および9年度に同一地域で実施された車載型CR装置による胸部集団検診画像約10000例の胸部正面画像を収集し,1/10に圧縮して光磁気ディスクに記録した. これらの研究成果から,コンピュータによる結節状陰影の解析結果を医師が集団検診画像を読影する際に利用すれば,注意を喚起され,見落とし等を防止することが可能となることが示唆された.
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