研究概要 |
筑波技術短期大学は、視覚障害者および聴覚障害者の高等教育機関としてわが国で初めて設立された国立の3年制大学である。 われわれは、1989年度の全入学生を皮切りに、毎年春、大学生健康調査(UNIVERSITY PERSONALITY INVENTORY、通称UPI)を実施し、その結果をもとにして視・聴覚障害学生のメンタルヘルスの諸特徴を系統的に研究してきた。 本研究では、まず1993年度と1994年度を合わせた筑波技術短期大学入学生のUPI得点を,正常対照群である同年度筑波大学入学生と比較検討した。その結果,視覚障害学生群のUPI得点の平均値は,正常対照群に比べて有意差はないが,これに対して,聴覚障害学生群の方は,正常対照群に比べて有意に低かった。一方、視覚障害学生群における視力段階とUPI得点の相関をみると、全盲群、弱視群、視力0.3以上の群の順でUPI得点が漸次低かった。このうち、視力0.3以上の群のUPI得点のみが正常対照群よりも有意に低かった。 また、肯定率が50%以上の設問項目数について検討してみると、視覚障害学生群では、正常対照群と同様に不安・抑うつに該当する複数個の項目で該当した。これらの項目数を視力段階別にみると、視力障害の程度が高度になるほど項目数は多くなる傾向があった。聴覚障害学生群ではLIE SCALEに該当する1項目のみであった。 このように、集団としてこれら3つの群をとらえると、メンタルヘルス上では、視覚障害学生群と正常対照群はより近い関係にあるが、聴覚障害学生群のみはやや異質であるという3つの群の位置関係がうかがわれた。
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