研究概要 |
アルツハイマー型痴呆の脳に出現する老人斑で“アミロイドの塊の中にグリア線維束が入り交じり,変性神経突起は殆ど認められない"という基準をみたす“アミロイド斑(以下APと略)"を7剖検例を用いて検索し,以下の結果をえた. (1)組織学的研究:APが広範に出現する2症例では,APは変性の強い側頭葉と頭頂葉の脳回の谷部に多数出現する傾向があった.3症例では,側頭葉・頭頂葉などの脳回の谷部にわずかに出現していた.APが全く出現しない例が2例あった. (2)免疫組織化学的研究:β-amyloid(Aβ)のAβ1-40,Aβ1-42,Aβ8-17を認識する抗体による検索では,APはこれら3種の抗体に陽性を示した.Aβ1-40とAβ1-42の両分子種ともAPの構成成分であった.また抗GFAP抗体ではAPの周囲とAPの中に細かく入り込む星状膠細胞の細い突起が染色された.抗タウ抗体ではAPの周囲に陽性反応を示す変性神経突起がごく少数確認された. (3)超微形態学的研究:グリア線維束からなる星状膠細胞の細い突起がアミロイドの中心まで侵入し,アミロイドを区画する像が観察された.検索対象とした2例のAPの特殊性が確認された.また,星状膠細胞の突起の一部がglial filamentsとともにpaired helical filaments(PHF)に類似する異常細管をもつことを2例で見いだした. (4)Gallyas電顕と免疫電顕による研究:星状膠細胞の突起内の異常細管が嗜銀性をもち,また抗タウ抗体に陽性を示し,PHFと類似することを明らかにした. 結論 以上の研究から,APは変性神経突起の欠除や星状膠細胞の反応の点で他の老人斑から区別される特殊型である.しかし構成するAβの分子種に相違がないことが明らかになった.また長期臨床経過例でも少数しか出現しない例があり,臨床経過との関連性も乏しいと思われる.
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