研究概要 |
私は、マウス副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)受容体遺伝子が4個のエクソンからなり、第1から第3エクソンは5'非翻訳領域を、第4エクソンは5'非翻訳領域の一部と前翻訳領域及び3'非翻訳領域をコードとすることを、また,マウス副腎で選択的スプライシングにより第2エクソン(57bp)を含むmRNAと含まないmRNAの2種類のmRNAが生ずることも明らかにした(Gene,1997)。次に、プライマー伸長法により転写開始点の決定を行い、124bpに亘り4つ認め、最下流の転写開始点を+1とすると、他は-62、-94、-123であり、第1エクソンは50bpとヒトとほぼ同一の長さであった。各転写開始点の上流には,TATA,CAAT,GC boxは存在しなかった。転写開始点の上流約1.2kbまでの核酸配列には、-1152から-1146にAP-1結合コンセンサス配列が存在した以外、典型的なcyclic AMP responsive elementやglucocorticoid responsive elementは認めなかった。次に、最下流の転写開始点を含み5'上流側を種々欠失させたDNA断片をluciferase reporter geneに組み込んだコンストラクトを作製して、Y-1細胞とNIH3T3細胞にトランスフェクトしてプロモーター活性を検討した。結果、プライマー伸長法で認めた4つの転写開始点をすべて含む-195/+36のY-1細胞でのluciferase活性は、NIH3T3細胞に比し著明に高く、また、Y-1細胞でのpromoterless luciferase plasmid (p-basic)のluciferase活性に比べ約70倍の高値を示した。そこで、各転写開始点のプロモーター活性を検討するために,-195/+36から5'又は3'欠失コンストラクトを作製してY-1細胞にトランスフェクトしたところ、-62/+31ではp-basicに比して6倍の活性を示したが、-195/-93及び-195/-65ではp-basicと同程度の活性であった。これらの結果からマウスACTHA受容体遺伝子の最小プロモタ-活性は-62bpに存在し、組織特異的発現調節領域は-195bpまでに存在すると推測された。引き続き-195bpまでの領域でgel retardation assayやfoot printing等により転写調節因子の結合部位を決定し、転写因子の単離を目指している。
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