研究概要 |
糖尿病状態におけるnitric oxide(NO)とcyclic AMP(cAMP)の関係(平成8年度よりの継続) (1)ヒト神経芽細胞腫細胞(SH-SY5Y)を用いて (I)aldose reductase inhibitor(ARI)のNO産生に与える効果 ARIであるONO-2235,SNK-860を10μMの濃度で培地に添加すると、30分〜24時間の間、NO産生の指標であるNO_<2+3>,cGMP含量は有意に上昇した。ARIはsorbitol含量を低下させ、myoinositol含量,protein kinase C活性を上昇させるのみならず、cAMP含量も同時に有意に上昇させた。ARIは、この2経路を介してNO産生を上昇させると考えられた。 (II)ARIのNa^+,K^+-ATPase活性(ATPase活性)に与える影響 ARIの添加により高グルコース下で低下したATPase活性は有意に上昇した。ARIと同時にNOSの阻害剤であるL-NAME 10μMを添加するとこの上昇は完全ではないが有意に抑制された。ARIのATPase活性への作用は一部NO産生上昇を介しているものと考えられた。 (2)ラットを用いて 糖尿病ラットにおいて、6W〜12Wの間の坐骨神経中のNO_<2+3>,cGMPは有意に低下していた。この事実をもとに今後、PGI_2 analog dibuthyryl cAMP,ARIなどの投与による坐骨神経中のNO_<2+3>,cGMP,cAMP,ATPase活性、神経伝導速度の変化を観察する予定である。 糖化蛋白、free radicalとNO産生の関係について SH-SY5Yを用いて 活性酸素消去酵素であるSOD、糖化蛋白の阻害剤であるアミノグアニジンおよびその代謝物投与によるNO_<2+3>,cGMP(NO産生の指標)の変化を現在観察中であるが、まだ、一定の結論を得られていない。さらに今後のこれらの基礎的検討を継続していく。 以上のように、NO産生は数腫の経路により影響を受け、Na^+,K^+-ATPase活性に影響を与えることにより神経機能調節に関与していると考えられる。今後さらに研究を発展させ、NOの糖尿病性神経障害形成における役割を明かにしていく予定である。
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