研究概要 |
1.不活性型GHの病態解析 臨床的に不活性型GHが疑われた症例のGH遺伝子にヘテロのミスセンス変異(D112G)を認め、蛋白レベルでは変異型GHが優位に発現していた。GST融合蛋白として大腸菌で作成した変異GHとGH結合蛋白(GHBP)とのcomplexの分子量はHPLCの結果1:1で野性型GH-GHBPの1:2と比較してダイマー化の障害が示唆された。変異GHではIM9細胞でのGH受容体(GHR),JAK2,STAT5のリン酸化の低下と、GHR細胞外ドメイン、thrombopoietin受容体細胞質ドメインのキメラcDNAを導入したBaF/3-GM細胞での代謝反応の低下を認めた。 2.GHR異常症の病態解析 (A)G724Tと981Cの1塩基欠失(981C-del)を認めた複合ヘテロ例の父と兄には981C-del、母にはG724TをPCR-direct sequence,PCR-RFLPで確認した。父のリンパ球よりGHR mRNAをRT-PCR、direct sequenceしたところ正常GHRのみ発現していた。G724Tは発現しても細胞外ドメインの一部で(E224X)、981C-delは十分に発現しないとすれば本症例の高度の成長障害(-7.6SD)と血中GHBP低値(検出感度以下)は説明しうる。 (B)GH不応性とGHBP高値(896,871 pmol/l)を呈した低身長(-3.0,-3.5 SD)兄妹例でGHRイントロン9のsplice donor siteにGからAへのヘテロの変異を認めた。母と兄妹のリンパ球GHR mRNAはRT-PCR,direct sequenceよりexon9のskipとframe shiftによりexon10では3アミノ酸が置換された後、終止コドンとなった。今後本例ではヘテロでの発症とGHBP高値の原因解明のため変異GHRを作成し、in vitroでの検討が必要である。
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