研究概要 |
glycemic controlが不良であっても腎症が発症しない糖尿病患者の存在が知られており、糖尿病性腎症の発症機序の詳細は不明である。この研究は糖尿病性腎症と活性が高いにも拘らずその臨床的意義が不明な血小板12-LOXとの関連性を明らかにすることである。初年度は63名のNIDDM患者と18名の健常者の血小板12-LOXを測定しNIDDM患者では性、年齢、BMIを一致させた健常者に比べ血小板12-LOX活性が有意な低下を認めた。また血小板12-LOX仮性は血糖control markerと弱いながら有意な相関性を示した(12-LOX vs HbA_<1c>:r=-0.354, p<0.01, 12-LOX vs fructosamine : r=-0.29, P<0.05, 12-LOX vs 1, 5-anhydroglucitol : r=0.369, P<0.01)。その成果を踏まえて次年度は血小板12-LOX活性と糖尿病性腎症との関連性を検索した。まず前述したNIDDM患者を12-LOX活性(ng/10min/5×10^7PLT)が1.1以上の正常群(N=18)と1.09以下の低下群(N=40)に区分しHbA_<1c>値(%)と尿microalbuminの排泄量(21 ; 00p.m.〜6 : 00a.m.: mg/1)を、しれぞれ測定した。その結果12-LOX活性低下群ではHbA_<1c>値と尿microalbuminの排泄量との間に有意な相関は認めた(r=0.547, P<0.002)が、正常群では有意な相関は認めなかった。さらに罹病期間5年以上の12-LOX活性低下群(N=13)の尿microalbumin排泄量は性、年齢、罹病期間を一致させた12-LOX活性正常群(N=13)に比べ有意に高値を示した(student-t test : P<0.04)。最近、血小板12-LOXが血小板phosphlipase A_2活性を抑制することが報告されており、今回明らかにされた糖尿病における血小板12-LOX活性の低下は血小板phosphlipase A_2活性亢進→TXA_2産生亢進→血小板凝集亢進を介して糖尿病腎症の発生・進展に関与していると推定された。したがって糖尿病における12-LOXの活性低下は腎症発生・進展の危険因子であると考えられた。
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