研究概要 |
IGFおよびIGFBPの病態生理的意義について以下に示す知見を得た。 1]神経性食欲不振症(AN)における低栄養の指標としてのIGFsおよびIGFBPsに関する検討:ANでは血中IGF-IおよびIGFBP-3は低値でbody mass index(BMI)とは正の相関を認め,一方,血中IGFBP-2は高値でBMIとは負の相関を認めた。重回帰分析ではこれらの測定価の中でIGFBP-2がよりBMIと関係することを認めた。これらの成績は低栄養の指標としてIGFBP-2がIGF-I,IGFBP-3より良い指標と考えられた。2]低血糖を呈する膵外腫瘍(NICTH)における血中IGFBPsおよびIGF-II遺伝子のloss of imprinting(LOI)に関する検討:a)IGF-II産生NICTHでは血中IGF-II値は必ずしも高値でなく,IGF-IIのみで本症の低血糖を説明することはできず,IGF-IIの作用を調節するIGFBPの変化が低血糖発症機構に関与することが考えられる。そこで,IGF-II産生NICTHにおいて,血中IGFBPを測定した。IGF-II産生NICTHでは血中IGFBP-2は高値で,血中IGFBP-3は低値であった。腫瘍を摘出後,低血糖が消失した症例では,術後,血中IGFBP-2は低下し,血中IGFBP-3は増加した。以上の成績はこれらIGFBPsの変化がIGF-IIのbioavailabilityを変化させ,低血糖に関与しうることが示唆された。b)IGF-II遺伝子はgenomic imprinting されているが、ある種の腫瘍でLOIを認め,このLOIがIGF-IIの過剰発現をきたし腫瘍の発育に関与することが示唆されている。そこでIGF-II産生NICTHの腫瘍についてIGF-II遺伝子のLOIがあるか否か検討した。informative caseの11例中8例にIGF-II遺伝子LOIを認め,本症のIGF-II過剰産生にLOIの関与が示唆された。3]腎機能とIGFBP-6に関する検討:血中IGFBP-6は慢性腎不全では高値を示し,血中クレアチニン値と正の相関を認めた。更に,腎移植後,速やかに血中IGFBP-6値は低下し,血中IGFBP-6が腎機能に連動して変化することを認めた。4]血中acid labile subunit(ALS)の血中動態:血中ALSはGH分泌能を反映し,GHDの診断,治療効果の判定に有用であると考えられた。
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