研究概要 |
成長ホルモン(GH)は視床下部神経細胞の活動を修飾して自己の分泌を調節する可能性が指摘されている。本研究では、GHの視床下部作用がGHの直接作用か、またはGHによって誘発される全身的効果-たとえばIGF-I-を介するのか検討し、さらにNPYの関与について検討した。 成熟雄ラットを用い、無麻酔下でラットGH,0.5μgを視床下部の弓状核、室周囲核、または視床下部外側部に微量投与してGHの分泌動態を観察した。弓状核、室周囲核にラットGHを投与したラットでは、投与後約12時間にわたってGH分泌は抑制された。抑制されたGHの基礎値は、ソマトスタチンの抗血清を投与すると上昇したが、拍動性分泌は回復しなかった。一方、視床下部外側部に投与したラットでは、GH分泌は変化しなかった。ヒトIGF-I,0.1μgを視床下部弓状核または室周囲核に微量投与して同様の観察を行った。IGF-Iの局所投与はGHの分泌に影響を与えなかった。NPY,5μgの脳室内投与はGH分泌を抑制し、この効果は、視床下部前側方離断術によってソマトスタチンの分泌を阻止すると消失した。 以上の結果から、GHの視床下部を介する自己分泌調節機構はGHの視床下部直接作用であり、IGF-Iを介さないことが示唆された。弓状核のNPY細胞はGH受容体遺伝子を発現し、GHに応じて神経細胞の活動の指標となるc-fosを発現することから、GH自己分泌調節に重要と考えられ、NPYはソマトスタチンの分泌促進を介してGH分泌に抑制的に作用する可能性が考えれられた。
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