研究概要 |
我々は,リン脂質の2位の多価不飽和脂肪酸が過酸化されアルデヒドとなったアシルグリセロホスホコリン(GPC)コアアルデヒドが,酸化LDL中に存在していることを報告した(J Lipid Res 36:1876,1995)。本研究により,ヒト粥腫にも,アシルGPCコアアルデヒドが存在していることを明らかにし(Circulation 94:I-707,1996),さらに,ヒト粥腫には,1位がエーテル結合したアルキルGPCコアアルデヒドも存在していることを明らかにした(Atherosclerosis 134:183,1997)。 その生物活性についても検討を加え,C5アルキル(ヘキサデシル)GPCコアアルデヒド:1-O-hexadecyl-2-(5-oxovaleroyl)GPCは,約50nMのED50で,血小板活性化因子受容体を介して洗浄家兎血小板を凝集させることを明らかにした。C5アシル(パルミトイル)GPCコアアルデヒド:1-palmitoyl-2-(5-oxovaleroyl)GPCは,血小板凝集は惹起しなかったが,血小板のShape Changeを惹起した(Atherosclerosis134:183,1997)。C5アシル(パルミトイル)GPCコアアルデヒドは,Fogelmanらにより,minimally oxidized LDLの活性脂質の一つと報告された(J Biol Chem 1997)。 粥状硬化の形成が,過酸化の関与した慢性炎症として理解され,その疾病としての発症に,脂質に富んだ粥腫の崩壊とそれに続く血栓形成が重要視されつつある。本研究により,炎症のメディエーターであるエイコサノイドやPAFと同じ前駆リン脂質から過酸化により生成し,PAF受容体を介して血小板を凝集させる新しい活性脂質を,ヒト粥腫に同定した。GPCコアアルデヒドの内皮依存性弛緩反応抑制作用や,CEコアアルデヒドの細胞障害作用についてさらに検討を進めている。
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