核内タンパクWT1がほとんどの急性白血病症例の白血病細胞で正常骨髄細胞の1000倍以上のレベルで高発現している事実を利用してWT1を標的とした急性白血病に対する抗腫瘍免疫療法を試みる事が本研究の目的である。まず最初に、WT1産物の一部分(ペプチド)がMHC分子と結合し、細胞表面に提示され、免疫反応を引き起こす事が可能かどうかを検証するために、以下の実験を行った。マウスWT1産物の一部分を構成するペプチドのうち、ペプチドライブラリーを用いて決定したscoring systemにより、C57BL/6マウスのclass I MHCとcomplexをつくりやすいと予想されるもの(現在までにK^bに結合しやすいと思われるものとD^bに結合しやすいと思われるもの数種類ずつ)を合成した。これらのペプチドとK^bやD^bとの結合をbinding assayにより実際に確認した。 上記のペプチドでC57BL/6をin vivoで免疫し、そのマウスの脾細胞をin vitroに取り出し、以後、そのペプチド及び放射線をあてた脾細胞(抗原提示細胞を含む)でその細胞をin vitroで反復刺激する事により、そのペプチドを特異的に認識し増殖するCTLクローンを樹立する試みを行っている。現在までに、K^bに結合しやすいペプチドを用いて免疫する事によりin vitroで増殖する細胞を数種類得る事ができた。現在、これらの細胞の性格(ペプチド特異性、細胞表面マーカー、殺細胞能など)を解析中である。
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