研究概要 |
トロンボトエチン(TPO)は巨核球・血小板産生を特異的に促進するサイトカインである。そのレセプターはc-mpl遺伝子によってコードされ、他のサイトカインレセプタースーパーファミリーのメンバーと同様に細胞内にキナーゼドメインを持たないが、TPO刺激により早期に多くの蛋白のチロシンリン酸化が誘導される。我々は白血病細胞株UT-7からTPOに増殖依存性を有し、成熟巨核球の性格を持つ亜株UT-7/TPO細胞株を樹立し、この細胞株を用いてTPOシグナル伝達の解析を行い、JAK-STAT系,RAS-MAPK系、そしてイノシトールリン脂質系がTPO刺激により活性化されることを明らかにし(Blood 89:552,1996;Biochem.Biophys.Res.Commun.217:230,1995;Biochem.Biophys.Res.Commun.in press)。さらに完全長型c-mplPcDNAを内因性にc-mplを発現していないUT-7/EPO細胞株に遺伝子導入し、TPOによって増殖分化が観察できる系を確立した。TPOによってトランスフェクタントは大型化し、巨核球様の細胞に変化し、糖蛋白IIb/IIIaの発現量も増加した。そこでTPOレセプターの細胞内ドメインの機能を解析するために我々はc-mplの種々のdeletion mutantを作製し、UT-7/EPO細胞に遺伝子導入し、巨核球の分化、細胞増殖、チミジン取り込みによるDNA合成について解析した。細胞増殖や巨核球分化に必須な領域はアミノ酸575-586とアミノ酸615-630にあり、アミノ酸587-614には細胞増殖や巨核球分化を負に制御する領域が存在することが明らかになった。DNA合成に必須な領域はアミノ酸565-574であり、DNA合成が誘導されても細胞増殖に必ずしも結び付くものではないこともわかった(J.Biol.Chem.In press)。
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