研究概要 |
ヒト巨核球の多倍体化における細胞周期関連蛋白の変動について検討した。ヒト巨核球系細胞株であるMeg-J細胞にインドロカルバゾール系化合物であるK-252aを添加して培養すると多倍体化し、血小板糖蛋白GPIIb/IIIa、GPIbの発現が増強した。また、トロンボポエチン(TPO)をK-252aに同時添加して培養すると、多倍体化がさらに促進され、GPIIb/IIIa,GPIbの発現もさらに増強した。形態的にも大型化し、偽足形成がみられるなど巨核球への分化傾向が認められた。K-252aによる多倍体化および巨核球系への分化誘導は、巨核球の形質を有する細胞株(Meg01,UT-7,CMK)、あるいは巨核球系への分化能を有する細胞株(HEL,K562細胞)において認められた。すなわち、K-252aによる多倍体化は造血細胞では巨核球系の細胞あるいは巨核球系への分化能力のある細胞に特有な現象であると考えられた。 このMeg-J細胞による多倍体化モデルを用いて、サイクリンB1の変動の有無についてフローサイトメトリーにより解析した。Meg-J細胞がM期を経て通常の細胞分裂を行う場合には、G_2/M期にCyclin B1の高発現が認められた。一方、多倍体化過程における細胞周期、すなわちMeg-J細胞にK-252a、TPOを同時添加して培養した場合にみられるM期を完遂しない細胞周期においては、G_2/M期に相当する時期にCyclin B1の高発現が認められなかった。この結果より、Cyclin B1/CDC2キナーゼの量的な減少が、多倍体化に関連していると考えられた。正常の巨核球が多倍体化し、分化していく過程でもM期が完了しない細胞周期を回ることが知られており、このモデル系と同じ現象がおきている可能性が考えられる。今後、正常巨核球において同様な現象が認められるかについて検討する必要がある。
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