研究概要 |
研究計画に従って、plCln,ClC-k1,SMITの抗ペプチド抗体を検出手段として腎組織中のそれぞれのチャンネル、トランスポーターを分離精製を試みた. plCln:膜分画と可溶分画の双方にこのチャンネル蛋白は存在し、膜分画のものはミトコンドリアに存在することが明らかになった.plClnはバクテリアのporinと極めて類似した性質があり、ミトコンドリアが進化論的にバクテリア由来であるとすれば、porinと類似した動態によってミトコンドリア外膜にチャンネル機能を発揮するであろう. ClC-k1:抗体が認識した腎可溶分画中に存在する蛋白2種の精製に成功した.その純化標品についてペプチド・シーケンスを行ったところ、この2種の蛋白は共に未知のものであって、1つはaminoacylaseのアミノ酸配列と1部同じであったが、サブユニット構造も分子量も異なる分子であった.他の1つはλ-crystallinと73%のホモロジーのある蛋白で、分子量、サブユニット構造もλ-crystallinとほぼ同じであった.注目すべきことは、共に腎固有の蛋白分子で他の臓器には存在しない. SMIT:ミトコンドリアと細胞表面膜に存在する分子の大きさは著しく異なり、細胞表面膜のものはcDNAから推定されたものより約20-kDa小さい.この不足分がN-末端であるとすれば、Na-認識部位と推定されている部分の欠失を意味する. 以上の結果を要約すると、(1)腎固有の蛋白を2種を発見した.(2)plClnとSMIT蛋白分子は主にミトコンドリアに存在した.(3)細胞表面膜に存在するSMIT蛋白分子は、cDNAからの推定値より20-kDa余小さく輸送分子機構の解析を見直す必要性を示した.
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