研究概要 |
我々はMRSA感染後、T細胞の広範な活性化とIgG-IgAのpolyclonal activationを来し、糸球体にIgA,IgG,C3の沈着を伴う新しい腎炎を報告した(KI,1995)。本腎炎は米国腎臓学会でCPCに取り上げられ、その存在が確認された(ANS,1995)。また1996年にNKFの招請講演を行った。 本腎炎では活性化T細胞が異常に出現することから、MRSA由来のエンテロトキシン(SE)の関与を推測し、3 color FACSにて、TCRVβ陽性細胞のサブセットを検討したところ、外来性スーパー抗原(SE)がによる活性化の指標とされるTCRVβ^+細胞の増加が顕著であり、また病勢とこのTCRVβ+細胞の推移が相関した。本腎炎患者に認められるリンパ球のsubsetの異常は外来性スーパー抗原とリンパ球活性化機序についてのin vitroの研究にて報告されているごとく,単にCD4細胞のみならずCD8細胞の著明な活性化,またmemory T細胞の活性化も認められることより,広範な免疫異常が生じているものと考えられる. 本年度はさらにこの現象を解析するためにin vitroの系を用いて解析した. 1.正常人末梢リンパ球に各種SEsを加えて培養するとSEに特異的に異なったTCRVβ^+細胞が数日で著増した. 2.TCRVβ^+メモリー細胞が数日で著増した. 3.メモリーIgA-,IgG-,IgM-bearing T cellsが有意に増加した. 4.サイトカインプロフィールではTh1サイトカインであるIL-2が初期に著増し,遅れてTh2サイトカインであるIL-10が著増し,明らかにTh2優位になった.これらin vivoの現象がin vitroで明確に説明された。特に、本腎炎にしばしば検出されたSE-C添加時のT細胞活性化状態並びにサイトカインプロフィールと一致していた。
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