研究概要 |
TGF-βをラット由来メサンギウム細胞に添加すると、[3H]thymidine取り込みの増加なしに、フィブロネクチン(FN)やコラーゲン(COL)typeIVなどの細胞外基質の増加をきたす。この作用がGTP結合蛋白(G蛋白)を介するかどうかを検討するために、G蛋白認識配列ペプチドによる阻害実験を施行した。その結果、Gs,Gi,Gq認識配列ペプチドでは100pM TGF-β刺激下のメサンギウム細胞による培養上清中のFNやCOLtypeIVの変化が認められず、Go認識配列ペプチド(NNIQV VFDAV TDIII ANNLR)のみが阻害作用を示した。しかし、細胞膜の外側から添加したG蛋白認識配列ペプチドが、細胞内に取り込まれているかを正確に検証することが困難であった。そこで、Ikezuらが作製したGαsキメラのcDNAを用いて検討することにした。これは、GαsのC末端の5個のアミノ酸を変化させたもので、Gαs wild type,Gαs/αi,Gαs/αo,Gαs/αz,Gαs/αq計5種類のcDNAをリポフェクチン法でメサンギウム細胞にtransientにtransfectし、TGF-βによる細胞外基質増加作用に対する影響を検討した。その結果、Gαs wild type,Gαs/αi,Gαs/αz,Gαs/αqではTGF-β刺激により培養上清中のFN濃度の変化を認めなかったが、Gαs/αoをtransfectした場合、培養上清中のFN濃度の増加を認めた。よって、メサンギウム細胞においては、TGF-βによる細胞外基質の増加にはGoが関与している可能性が高い。
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