目的:新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)に対し、肺血管平滑筋の弛緩を目的として一酸化窒素(NO)ガスの投与が試みられ効果を上げている。一方、NOの代謝産物、Peroxynitrite (ONOO)によるin vitroでのミトコンドリア電子伝達系への阻害の報告ある。PPHNでは過剰の酸素投与によりO_2とNOが反応しONOOができやすい状態となる。そこで本研究は新生仔豚に肺高血圧モデルを作成し、NOガスを経気道的に投与し肺、骨格筋のミトコンドリア電子伝達系の機能を測定し、最適のNO投与法を検討した。 方法:PPHN新生仔豚を作成、NOガス濃度を10〜60ppm内で10分から40分間投与した後、エーテル麻酔で屠殺後、肺、骨格筋を取り出しミトコンドリア電子伝達系酵素であるcomplex I、II、III、IV、citrate synthase活性(CS)とを測定した。 結果:control群7例とNO群6例のcomplex I+III、II+III、IV、CSの値は、肺、骨格筋ともMann-Whitney検定で両群間に有意差はなかった。 考案:この実験結果からは、NO吸入療法によるミトコンドリア電子伝達系活性への影響は認めなかった。しかし臨床ではNOを24時間から10日以上使用することがあり長期にわたるNO吸入の影響まで今回の結果からは否定できない。NOは血管内でHbと速やかに結合し不活化されるため比較的安全と考えられるが、高濃度酸素との併用でNO_2やONOOの産生が高まり組織障害ひいてはミトコンドリア膜障害の可能性もあるため、今後さらに慎重な検討を要する。
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