研究概要 |
平成8年度は、実験小動物を用いた頭蓋顔面の形態学的研究におけるX線規格写真撮影に用いるべく頭部固定装置(ラット用)を考案開発し、ウィスター系ラット8週令、11週令各20匹の頭部を用いて側方位、軸位での基準値を算定、高い規格再現性(側方位標準誤差0〜021、軸位 標準誤差0〜0.17)を得た。 平成9年度は本固定装置を用いてのX線フィルム測定値の拡大率補正後の値と乾燥頭蓋骨実測値との比較・検討を行い、軸位計測値においては、1)8週令11週令を比較して、計測項目別に減少に似た傾向、2)軸位最大前後長の誤差が最小、3)切歯骨最大幅計測比較において歯牙(切歯)と骨(切歯骨)との縮小率の差異を示唆、4)計測値差異は幅径>長径の傾向など、側方位計測値においては、1)8週令11週令を比較して、計測項目別に増減に似た傾向、2)頭蓋顔面前後長の誤差が最小、3)頭蓋前後長と鼻骨前後長の実測値補正値比較における増減を加えると頭蓋顔面前後長の誤差に近似、4)頬骨前後長・切歯骨前後長は側方位計測値として不適当などの結果を得た。生体計測と屠殺後乾燥頭蓋計測を併せて行う場合、とくに縮小率の標準値の設定が必要である。その他、乾燥頭蓋作成時の切歯・頬骨(頬骨弓部)・鼓室骨・頭頂間骨の脱落による計測誤差も考慮すべきと思われた。 平成10年度は実験小動物を用いてcraniofacial distractionによる頭蓋拡大の経時的検討を1)gradual distractionとrapid distractionの比較、2)それぞれの方法によるrelapseの比較において行った。実験の計測は前年度までに作成・検討した小動物用(家兎用)頭部固定装置を使用した。体重約3kgの日本白色家兎8羽を用い、Guerrero;ウェルズ社製Craniofacial Distractorを用いてcraniofacial distractionの速度を2群に分けて実験した。ソフロンによる軟x線撮影を経時的に行い(延長前,延長終了時,1週間後延長器除去直後,延長器除去3日後,1週間後)、仮骨、後戻りの状態を観察した。骨延長部の軟X線による経時的観察により、緩徐群は急速群に比して骨新生距離が有意に長く、後戻り距離も少なく、これは骨延長部周囲の組織学的観察によっても同様の所見を得た。つまり、実験小動物における頭蓋拡大はより緩徐に行うものが、骨新生がより多く、後戻りも少ないため有利と考えられた。
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