研究概要 |
膵胆道癌に特徴的な神経周囲浸潤に対する効果的な局所化学療法を確立するため、抗NCAM抗体と制癌剤を結合させて複合体を作成し、in vitroにおける薬剤活性、抗体活性、in vitroにおける複合体の腫瘍到達制、抗腫瘍効果等を検討するのが本研究の目的である。これまで、抗NCAM抗体ーマイトマイシンC複合体を作成し、in vitroにおける複合体の薬剤活性およびin vitroにおける複合体の抗体活性を検討した。その結果、複合体の薬剤活性と抗体活性がともに十分維持されていると確認した。さらにin vitroにおける複合体の腫瘍到達制、抗腫瘍効果を検討するため、ヌードマウス皮下移植株におけるNCAM抗原の発現を免疫組織化学染色法にて検討した。その結果、当科で継代しているヌードマウス皮下移植株では、肝内胆管細胞癌(CCC-1,CCC-2)、胆外胆管癌(TGGK,GGK)ともNCAM抗体により染色されなかった。そこで、各種ヒト消化器癌培養細胞におけるNCAM抗原の発現をFCMを用いて検討した。すなわち、一次抗体として抗ヒトNCAMモノクローナル抗体を、1時間反応後、二次抗体としてFITC化抗マウスIg抗体(DAKO,denmark)を氷冷にて30分反応させ洗浄した。フローサイトメーター(EPICS ELITE ESP,Conlter,Maiami,FL)を用いて1x10^4個の細胞の抗原発現の程度を比較した。その結果,肝内胆管細胞癌(HUCCTI,HUH28)、膵癌細胞(PK-1,PK-9)、直腸癌細胞(CaR-1,RCM-1)及び大腸癌細胞(LS174T)においてNCAM抗原の強い発現は認めなかった。今後、本研究の目的を達成するためにNCAMのcDNAをトランスフェクションして、安定したNCAM陽性癌細胞株を樹立し、実験をすすめたい。
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