研究概要 |
対象は術前に門脈枝塞栓術を施行した13例であり、その内訳は胆管癌6例、転移性肝癌3例、肝細胞癌1例、胆嚢癌1例、肝のう胞腺癌1例、胆管細胞癌1例であった。また、その非癌部肝組織は正常肝12例、慢性肝炎1例であった。 門脈枝塞栓術は開腹下に回結腸静脈の枝を経由してカテーテルを門脈枝まで進めた後に塞栓を行った。塞栓物質としてはGelform Powder 2gとAmikacin200mg,トロンビン1万単位を混合したものを用いた。血清TGF-αはELISA法にて測定した。採血は塞栓前と1,2,3,5,7,14病日それ以降は症例により21病日まで採取された。また、本手術の際に、塞栓部と非塞栓部の肝組織を採取し、抗PCNA抗体による免疫組織染色を行い、肝細胞1000個あたりの陽性細胞数として、labering index(L.I.)を算出し、DNA合成能を比較した。 塞栓前のTGF-αは5pg/ml未満群5例、5pg/ml以上15pg/ml未満群3例、15pg/ml以上群5例であった。全例とも経過中に塞栓術による肝機能への影響は軽度であった。また、13症例のうちで11例において血清TGF-αは塞栓後2峰性のピークを示し、最初のピークは第1病日から第3病日の間にあり、2番目のピークは第14病日から第21病日にあった。残りの2症例は1峰性のピークを示した。5症例におけるPCNA染色のL.I.は塞栓部で0.8±0.8、非塞栓部で13.8±9.19であり非塞栓部は塞栓部に比して、有意に高値を示した。
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