研究概要 |
大腸癌では75%(50/67)にテロメラーゼ活性を認めた.単発癌では70%(38/54),多重癌では92%(12/13)に活性を認めたが有意差はなかった.テロメラーゼ陽性例と陰性例で年齢,性別,病理学的進行度,病理組織像に有意差はなかった.大腸腺腫の陽性率は33%(16/18)で,大腸癌のほうが陽性率が高かった(P<0.05).大腸癌を合併した腺腫では45%(5/11),癌を合併しない腺腫では13%(1/7)が陽性であった.高度異型の腺腫は25%(1/4),軽度異型では36%(5/14)が陽性で,異型度とテロメラーゼ活性は相関しなかった.Microsatellite instability(MI)陽性は単発癌の24%(13/54)に対し多重癌は54%(7/13)と高率であった(P<0.05).年齢,性別,病理学的進行度,病理組織像とMIの発現に有意差はなかった.一方大腸腺腫では22%(4/18)にMIを認めたが,MIを認めた腺腫はいづれも大腸癌を合併し,組織像は軽度異型であった.大腸癌でテロメラーゼ陽性例のうちMI陽性は34%,MI陰性は66%であり,テロメラーゼ陰性例のMI陽性は18%,MI陰性は82%で,大腸癌のテロメラーゼ活性の発現とMIに相関はなかった.また腺腫ではテロメラーゼ陽性例のうちMI陽性は33%,MI陰性は67%で,テロメラーゼ陰性例のうちMI陽性は17%,MI陰性は83%で,両者の相関は認められなかった.生存率をみると,テロメラーゼ陰性あるいはMI陰性の大腸癌患者の予後が悪い傾向があったが,いずれも有意差はなかった.またテロメラーゼ陰性例ではMIの有無で生存率に有意差はなかったが,テロメラーゼ陽性群ではMI陽性例は,MI陰性例に比べて有意に予後不良であった(P<0.01).テロメラーゼ活性とMIは,大腸癌と大腸腺腫の診断に役立ち,悪性度や予後判定因子として有用である.
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