研究概要 |
1. 進行胃癌の潜在性腹膜播種の診断の確立 (1) 術中洗浄細胞診(Papanicolau法)による診断 漿膜浸潤陽性胃癌171例に対し術中洗浄細胞診を施行し,肉眼的に播種陰性と判断した例の29.2%の例に細胞診が陽性である事が明らかとなり,多変量解析によって洗浄細胞診の結果は重要な予後規定因子の一つである事が明らかとなった。 (2) 免疫染色による細胞診の診断 洗浄細胞診施行例51例にCEA,と糖鎖抗原(CA19-9,STN,SLX)を用いた免疫染色を通常のPapanicolau染色に加えて施行した。その結果,Class3,4 (疑診)と診断した症例4例がClass5の確定診断を得る事ができた。しかし,本法によって陰性の中に新たに陽性と診断したものはなく,診断率の向上に寄与しなかった。 (3) RT-PCR法によるCEAmRNAの発現からみた細胞診の診断 洗浄細胞診施行例25例に対し,分子生物学的手法(RT-PCR法)を用いてCEAmRNAを洗浄液から抽出し,その発現から潜在する播種の診断を試みた結果,細胞診陰性と診断した14例中に2例CEAの発現が認めら診断率の向上が認められた。以上の研究結果から,胃癌の潜在性腹膜播種に対する洗浄細胞診を用いた診断はPapanicolau染色,免疫染色およびCEAmRNAの発現を総合的に見ることでより高い診断率を得る事ができると考える。 2. 腹膜播種の治療による細胞障害とアポトーシスの解明 (1) 胃癌細胞株に対するCDDP,5-FUの投与法の違いによる抗腫瘍効果と細胞形態変化 MKN-1.MKN-28,MKN-45,MKN-75に対し5-FU単独,CDDP単独および5-FU+CDDP併用投与し抗腫瘍効果を観察した結果,併用により抗腫瘍効果の増強と併用法としてCDDPを5-FUの後に投与した方が抗腫瘍効果が一層高い事が明らかとなった。形態変化は5FU単独では形態変化は軽微であったが,核小体の染色性が若干減少したCDDP単独では細胞と核の膨大がみられ,核の断片化(Apoptosis)が見られた。5FU+CDDP併用の細胞および核の変化は5FU,CDDPの単独投与の中間の変化を示した。 (2) CDDPとCaffeine併用による抗腫瘍効果 CDDPとCaffeineの併用による抗腫瘍効果をSTKM-1胃癌培養細胞を用いて観察した結果,CaffeineはApoptosisを誘導することによって,抗腫瘍効果の増強に関与していることが明らかとなった。
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