研究概要 |
1.進行食道癌において,Linkage mapping setを用い10cM間隔での染色体欠失地図の作製を修了した。 2.進行食道癌で40%を超える欠失の認めらた染色体は3p,5q,6p,6q,9p,9q,17p,17q,18q,21qであった。 3.これらの染色体の内5q,9p,9q,17p,17q,18qの共通欠失領域の同定を試み,5q31.1,9p21,9q22.3,17p13,17q25.1,18q22のそれぞれ2cM以内に共通欠失領域を見出した(Gastroenterology,submitted data)。 4臨床病理学的因子との関連は,17q25.1の欠失は発癌の早期より認められ,かつ70%以上と高頻度であることよりこの領域に食道癌のGatekeeper geneが存在すると推測された。また,9p21の欠失は進行癌で高頻度であり食道癌の予後因子となる可能性が示唆された。また,複数の染色体欠失の組み合わせによる予後予測では,5q,9p,17pの欠失を持つ担癌患者で予後不良の傾向にあった(Gastroenterology,submitted data)。さらにMicrosatellite markerを用いた欠失解析はcarcinosarcomaあるいはbasaloid cell carcinomaの組織発生を解析するのにも有効であった(Gastroenterology,1997:Genes Chromosomes Cancer,in press)。 5.3で見出された共通欠失領域に存在する癌抑制遺伝子ならびにその候補遺伝子の解析。 3p25のVHL,5q31.1のIRF-1,9p21のp16/CDKN2,9q22のPTCH,17p13のp53,17q25のenvoplakin,18q22のSamd2,Smad4,DCCのそれぞれの遺伝子の変異と欠失を解析した。このうちp53およびp16/CDKN2では高頻度に異常を認め,食道癌の生物学的特性に関与しているものと推測された。PTCHはBasaloid cell carcinomaで高頻度に変異が生じており,この組織型に特異的な異常と考えられた。それ以外の遺伝子の異常はいずれも低頻度であり、それぞれの共通欠失領域に他の癌抑制遺伝子の候補が存在するものと考えられた。
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