研究概要 |
早期・表在食道癌の発見例の増加と共に、本邦では食道粘膜癌に対する内視鏡的粘膜切除術(EMR)が広く行われるようになっている。粘膜上皮(m1)と粘膜固有層(m2)にとどまる癌はリンパ節転移を有せず、EMRの絶対的適応となっているが、粘膜筋板に達するもの(m3)や粘膜下層表層に浸潤するもの(sm1)でも10〜15%のリンパ節転移を有するにすぎない。食道癌の外科的根治術の手術侵襲の大きさ、術後のQOLへの影響を考慮すると、この群の出来るだけ多くの症例をEMRで治療することを目的に検討した。 m3・sm1癌124例を全国主要施設から集め、内視鏡写真,切除標本,病理プレパラートを検討し、リンパ節転移のない群を検討した。隆起と陥凹の混在するもの,低分化型,INFγ,ly(+)にリンパ節転移が多かった。この群の症例に遭遇したら、腫瘍径4cm以上のもの,0-I,0-III,O-IIa+IIcのものは外科的切除術を行う。残りの症例にはEMRを行い、病理組織を検討し、中分化型,INFβ,ly(+)のもの,中分化型,INFγのもの,低分化型のものを外科的切除術の適応とし、他のものは経過観察でよいことが判明した。これでm3・sm1癌の58.9%の人が外科的切除を受けないですむことになる。 食道表在癌とfactor-8の関係をみると、癌病巣周囲の血管新生はm3から始まり、factor8染色性とリンパ節転移の間に有意の関連が認めらえた。 食道表在癌とKi67のモノクローナル抗体MIB-1を用いて増殖能をみると、m3から急にそのLabeling Index(LI)が増加し、増殖能の上昇が示唆された。MIB-1のLIはリンパ管侵襲,リンパ節転移と有意の相関を示した。 さらに研究を重ね、食道癌のminimally invasive treatmentの確立をめざしたい。
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