臨床的にHNPCCと推定された大腸癌家系10家系について原因遺伝子を解析した結果、4家系(F1、F2、F3、F4)においてhMSH2遺伝子の生殖細胞変異が明らかになった。次に、一般集団に発生した大腸癌のマイクロサテライトDNA不安定性を調べることにより、未知のHNPCC患者の検索を試みた。5領域について調べた結果、約170検体の大腸癌のうち33検体が不安定性(RER+)を示した。不安定性の程度は平均1.7/5であり、既知のHNPCC患者の癌の平均値4.3/5に比べて低かった。殆どの癌(25検体、76%)は1-2領域のみに異常を示した(mildRER+)。8検体(24%)は3-5領域で異常を示し(severeRER+)、そのうち2検体にhMSH2、2検体にhMLH1遺伝子の生殖細胞変異が検出され、HNPCC患者であることが判明した。この結果を基にして家系調査が行われ、3つのHNPCC家系(F5、F7、F8)が新たに見いだされた。以上の結果は、一般集団の大腸癌のマイクロサテライトDNA不安定性の解析が未知のHNPCC家系の発見に有用であることを示している。生殖細胞変異が判明したHNPCC家系についてPCR-SSCP法による発症前診断を行った結果、複数の新たな患者が見い出された。 なお、severeRER(+)を示した残りの一般集団の癌4検体のうち1検体にhMLH1遺伝子の体細胞変異が、mildRER(+)を示した一般集団の癌25検体のうち1検体にhMSH2の体細胞変異が検出された。
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