研究概要 |
【目的】保存中に最も障害が受けやすいと考えられている血管内皮細胞および平滑筋細胞について,正常人培養肺動脈血管内皮細胞(HPAEC)および平滑筋細胞(HPASMC)を用いて,移植肺保存液の至適カリウム濃度検討のための実験系を確立し,カリウム濃度の異なる保存液に対するHPAECとHPASMCの経時的なviabilityの評価を行なった。【実験方法】(a)K=4mEq/L濃度の保存液であるlow-potassium dextran solution(LPD)を基本として,カリウム濃度の異なる(K=4,60,100mEq/L)保存液を作成。(b)96multiplate内でHPAEC(n=8)およびHPASMC(n=8)がconfluentの状態になったのを確認後,カリウム濃度の異なる各種保存液を入れ,低温恒温器にて10℃下に6,12,24時間保存し,HPAECおよびHPASMCのviabilityをMTT assayを用い評価した。【結果】HPAECの各種カリウム濃度(K=4,60,100mq/L)の保存液におけるMTT assay24時間値(mean±SD)は、それぞれ0・147±0.011,0.125±0.013,0.189±0.039で、K=100mEq/L群が他に比し有意に高かった(P<0.05)。HPASMCの各種カリウム濃度(k=4,60,100mq/L)の保存液におけるMTT assay24時間値(mean:±SD)は、それぞれ0.028±0.003,0.042±0.008,0.053±0.008で、K=100mEq/L群が他に比し有意に高かった(P<0.05)。【結語】LPDを基本としたカリウム濃度の異なる保存液の24時間保存において、K=100mEq/Lの保存液がHPAECおよびHPSMCに対して最も良好な保存効果を示した。
|