研究概要 |
本研究では,1)長期凍結保存の気管移植片への影響に関する検討,2)凍結保存時間別の移植片免疫反応に関する検討,そして3)免疫抑制剤の短期間投与による臨床的免疫寛容の導入に関する検討を行った。 1) Lewisラットによる腹腔大網内への異所性同系移植モデルを用いて,0,1,2週間,1,2,3,6,9,12ヶ月の凍結保存移植片のviabilityを評価した結果,凍結保存時間の延長につれて上皮・軟骨共に変性が認められ,特に9ヶ月以上の凍結保存では解凍直後よりも移植後にさらに変性が強く認められた。移植期間を3ヶ月に延ばして創傷治癒を長期間観察した結果,凍結保存6ヶ月以上では形態が増悪したのに比べ,3ヶ月以下の凍結保存では移植期間延長により組織は可逆的に回復した。以上より,凍結保存の限界は3ヶ月と考えられた。 2) 腹腔大網内への異所性同種気管移植(Lewis rat×BN rat)モデルを用いて検討した結果,凍結保存による変化を認めるものの,それによる免疫反応への影響は認められなかった。そのため,凍結保存に伴う抗原性の変化を検証するためにOne way allo-MLRを行ったが,組織学的に明らかに免疫反応による変化がみられたのに対し,MLRでは十分な感作を誘導することができなかった。今後,Second graftを用いた検討を行い,凍結保存に伴う抗原性への影響を検討する必要があると考えられる。 3) 2)と同様の移植モデルを用いて手術当日より3日間の高用量免疫抑制療法を行った。免疫抑制剤(FK-506)の量に応じて4群(0,0.5,1.0,1.5mg/kg)を作成し,移植後4週間の血中濃度のモニタリング後,生着の検討を行った結果,FK-506を1.5mg/kg3日間投与することにより,最低血中濃度を0.5ng/mL保持し,移植後4週間の生着が可能であった。FK-506を2.5mg/kg以上を3日間投与することにより異種移植片も4週間の生着が可能であったため,今後凍結保存異種移植による検討を行う予定である。
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