研究概要 |
本研究ではp53変異によりastrocytoma細胞に賦与される種々の悪性形質を解析することを目的としている.本研究により,次のような成果が得られている. 1) 温度感受性変異p53(34℃でwild type,37℃でmutant type)を持つglioblastoma細胞株を用いて,温度変化に伴う化学療法剤に対する感受性の変化を検討した.この結果,温度を34℃にしてp53をwild type化すると,etoposide,paclitaxelに対する感受性が低下した.この現象に伴い,p53turnoverの正常化,p21,TGF-α遺伝子の活性化がみられ、flow cytometryによる細胞周期解析ではp53 wild type化に伴い,細胞のG1期への集積が認められ,G2M期を通ることによるetoposide,paclitaxel誘導apoptosisが減るため,感受性低下が起こることが判明した.一方cisplatin,ACNU感受性はp53の状態によらず変化しなかった(神経免疫研究1997および投稿準備中). 2) Adenovirus vectorを用いwild-type p53を導入することによるglioma細胞増殖抑制効果をみたところwild-type p53を持つglioma細胞では増殖抑制効果が発揮されず、mutant p53を持つ細胞でも約半数において増殖抑制効果が見られなかった.この原因としてAdenovirus-Coxachievirus Receptor(CAR)の発現低下が判明し,wild-type p53はCARの発現をdown regulationすることが判明した(投稿準備中). 3) p53の変異の有無をyeast functional assayで解析したglioblastoma症例の検討により,p53が変異したgliblastoma患者では放射線に対する反応がwild type症例に比べ有意に良く,術後生存期間が有意に長いことが判明した.
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