研究概要 |
血管内皮細胞の産生するEndothelin-1(ET-1)は血管平滑筋細胞に対し増殖作用を示すと考えられている.一方,血管内皮細胞の産生するNOはむしろ血管平滑筋細胞の増殖抑制,細胞死を促すと考えられている.これらET-1,NOは脳動脈瘤の発生・成長に影響を与えうると考えられる.さらに血管内皮細胞機能として細胞接着因子の発現がある.破裂脳動脈瘤では脳動脈瘤壁へ白血球が浸潤し動脈瘤壁を構成する細胞外マトリックスを破壊する可能性がある.こうした白血球の浸潤に細胞接着因子が関与すると考えられる.そこで,個々の脳動脈瘤がどの程度ET-1,NO,細胞接着因子であるICAM-1を産生しうるか検討した. 脳動脈瘤neck clipping後,動脈瘤を摘出しorgan culture(5%CO_2,37℃)を行った.24時間後,TNF-α(2-100 units/ml)を含む培養液と交換し24時間培養を行った.培養液中のET-1,ICAM-1はELISA法,NOはNitrate+Nitrite測定にて評価した. ET-1は一部の動脈瘤でTNF-αによるET-1の産生増大を認めた.ほかの例ではTNF-αによるET-1の明確な産生増大は認めなかった.NOは約50%でdetectableで,さらに約30%でTNF-αによりNO産生増大の傾向を認めた.TNF-αによりET-1とNOがcouplingして産生増大傾向を示したものは10%のみであった.ICAM-1は80%の動脈瘤でTNF-αにより産生増大の傾向を認め,特に破裂動脈瘤にて高値を示す傾向を認めた. 動脈瘤organ cultureでのET-1,NOの産生は様々なpatternをとり,これが個々の動脈瘤発生成長のvariationに関与しうることが示唆された.動脈瘤破裂に際して,細胞接着因子-白血球の動脈瘤壁浸潤の病態が関与しうることが示唆された.
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