研究概要 |
日常生活が自立している脳卒中片麻痺患者(以下,片麻痺患者)に対して運動負荷試験とQOL(Quality of Life,生活の質)についてのアンケート調査を行った。 運動負荷試験の結果から,片麻痺患者でも酸素摂取量(VO_2)と心拍数(HR)の間には,一方健常人に認められるような直線関係が成り立ち,片麻痺患者に対する体力評価の一手段として運動負荷試験が有効であることが示唆された。一般的に体力評価の指標として用いられる予測最大酸素摂取量からの検討では,片麻痺患者は健常高齢者と比較してVO_2が少なく,体力が低くなっていることも明らかとなった。特に麻痺による筋の緊張が最も亢進している時期患者(Brunnstrom stage IIIの患者)と70歳以上で有意にVO_2が少なくなっていた。しかし80歳を越えるような後期高齢者の体力基準値は未だ規定されておらず,今後健常後期高齢者の体力基準値を設定することも必要と考えられる。また,今回用いた低強度運動負荷試験の結果から導いた負荷量VO_2関係式は,VO_2=4.3kgm+124.3+3.5BW (6kgm≒1W, BW=体重)となり,この式から算出した推定VO_2と呼気ガス分析装置で測定した実測VO_2の間に有意差は認められず,この推定式を臨床の場で活用することができると考えられる。 QOL調査の結果では,客観的QOLの生活関連動作の項目がQOL総得点と最も相関が高かった。QOLと予測最大酸素摂取量との関連では,生活関連動作の満足度とのみ相関が認められた。生活関連動作の中で体力と最も関係があるのは,日常生活動作の「歩行能力」に規定される「外出」の項目であると考えられ,QOL向上のため体力を向上させることが重要であると考えられた。
|