研究概要 |
1.これまでの実験によりハムスター骨肉腫において,MDP (muramyldipeptide)の誘導体であるMDP-Lysの単独あるいはリポソーム封入による投与のいずれにおいても肺転移が抑制されることが照明された.またその至適投与量は単独投与で50μg/日以上,リポソーム封入による投与で20μg×2/週以上であった.今回アドリアマイシン(以下ADR)封入温熱感受性リポソームを用いて以下の実験を行った. (1) Dipalmitoylphosphatidylcholine :Distearoylphosphatidylcholine=9 : 1を用いてリポソームを作成し,逆相蒸発法によりADRを封入してADR封入温熱感受性リポソームを作成した. (2)生後3週齢のハムスターの下腿三頭筋内に可移植性骨肉腫を移植し,腫瘍の大きさを移植後1, 2, 3週で計測しこれをコントロール群とした. (3)移植後1週で以下の4方法の治療を行いコントロール群と比較することで抗腫瘍効果を判定した.A群:ADR静注,B群:腫瘍局所の温熱,C群:ADR静注と局所温熱の併用,D群:ADR封入温熱感受性リポソーム静脈内投与と局所温熱の併用の4群である.ADRの投与量はいずれも5μg/gとした.加温は43℃,30分の温浴で行った. 2. (1)今回作成したADR封入温熱感受性リポソームのADRの封入率は約20%で,薬剤放出率は41℃で約85%であった. (2)腫瘍移植後2週での相対的腫瘍増殖倍率(移植後2週の腫瘍体積/移植後1週の腫瘍体積)はコントロール群で13.5±6.7であった. (3)腫瘍移植2週後(治療後1週)の相対的腫瘍増殖倍率はA群では6.8±5.8,B群では7.4±4.3,C群では6.7±5.6,D群では1.8±0.5であった.A, B, C群では腫瘍の増殖抑制の傾向はあるものの,コントロール群と有意差を認めなかった.しかしD群では有意(p<0.05)に抗腫瘍効果が認められた.
|