研究概要 |
1) セル・オートマトン法を用いた生体骨のりモデリング解析 ・ 生体骨の持つ骨梁構造に類似した形態の再現が可能であり,骨再構築現象に対する本法の有効性が示された。 ・ 力学的環境の変化により,骨の内部構造が変化する可能性があることが解析により示された。 ・ 本研究ではセル・オートマトン法と有限要素解析とを組み合わせて用いたが,力学的刺激の大小を表すには有限要素解析より得られたひずみエネルギー値を用いた。この量はスカラー量でないため扱い安いので利用したが,実数値であるため本来のセル・オートマトン法の特徴である離散量を用いることにより数値拡散の影響を受けないという性質を生かすことができていない。力学的刺激という情報をいかに表現するかが今後の課題である。 2) 統計的最適化手法を用いた変形性足関節症、変形性膝関節症におけるアライメントと荷重の関係の検討 変形性足関節症,膝関節症を推定した,膝,足および距骨下関節を考慮した2次元有限要素解析モデルを作成した。骨切り角度をα,脛骨内反角度をβ,距骨内反角度をγ,踵骨内反角度をφとし,大腿骨中心に垂直方向にl00Kgfの荷重を加えた。その結果,変形性膝関節症のみの場合には20.4度,変形性膝関節症と足関節症とを合併した場合には22.3度の脛骨近位での骨切りが必要であることが算出された。下肢アライメントの変化が足関節に大きく影響し,人工足関節置換術を施行する場合には先ずアライメントを正す必要があること,また距骨下関節の代償機能が損なわれている場合には,人工足関節に過度の応力集中が生じる可能性があり,今後この分野での研究,解析が必要であると考えられた。 3) )統計的最適化手法を用いた人工足関節応力解析 従来の人工足関節置換術後には、脛骨側コンポーネントの設置角度やアライメントの影響で、脛骨側コンポーネントの内側部に荷重が集中しやすい。アライメントに対しロバスト性という概念を導入し、解析モデルを用いて計算を行った。その結果、FTAが176゚〜184゚の範囲で対応可能な人工足関節の形状が算出された。すなわち、奈良式脛骨側コンポーネントの幅を15.6mm、高さを、4.54mm、突起の傾斜角を60゚に改良する必要がある。また、突起の上面と脛骨海綿骨との間にヤング率10.8×10^4Mpaの物質を充填すればコンポーネントと骨との間のストレス偏位が解消されることも知れた。今後、このデータを基に検証を行う必要がある。
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