研究概要 |
当教室では厚生省脊柱靭帯骨化症調査研究班に所属し本疾患の調査研究を行っている。我々は本疾患が全身的骨化素因を有し、その部分現象として脊柱靭帯骨化が認められるという仮説を立てた。そこで当教室で現在行っている培養靭帯細胞が産生する各種増殖因子の測定の続行、および全身的骨化素因の1つとして末梢単核球に着目し、健常人と骨化症患者の末梢単核球増殖能の比較やそれらのエストロゲン存在下での比較検討を行った。 1、 まず脊柱靭帯骨化症患者の非骨化部靭帯組織を手術時に摘出し培養、3-5代経代後の細胞に各濃度に希釈した3,17-Estradiolを1-7日間連続添加しその上清中のTGF-β、b-FGF、IL-1,2.6.TNF-α,GM-CSFなどを測定した。その結果、対照に比較し患者群においてTGF-β、b-FGF産生比はエストロゲン添加で有意に上昇した。また、研究の続行として靭帯細胞の長期継代を試みており、これは本研究終了後も継続して検討する。 2、 全身的な骨化を導く一つの因子として末梢リンパ球の細胞性免疫能の異常を想定し、これを証明する研究を行った。まずT細胞機能異常の指標として末梢単核球のPHA反応性、およびplate-coatした抗CD3抗体反応性を検討した。その結果、患者群では健常者に比しこれらの反応性が低下していた。ここでT細胞をさらにCD4陽性T細胞に分画しその抗CD3抗体反応性および刺激時のIL-2産生能を検討した。その結果、息者群では抗CD3抗体反応性および刺激時のIL-2反応性が対照に比較して明らかに低下しており末梢T細胞異常はCD4陽性細胞の異常であることが明らかとなった。また、B細胞機能の指標としてPWM、SAC1の反応性を検討したところ、これらも患者群で健常者より低下していた。一方、リンパ球表面マーカー(CD3,4,8,19,25)およびT/B比には異常は見られなかった。さらに末梢単核球のエストロゲンやTGF-β,b-FGF反応性では、エストロゲン添加時には異常が見られなかったものの、その他の増殖因子添加時では患者群で健常者に比較して反応性の低下が見られた。これらのことからOPLL患者では末梢単核球の機能そのものが低下していることが示唆された。 3、 血清中の各種増殖因子を測定したところTGF-β,b-FGFが患者群で低下していた。 4、 脊柱靭帯骨化症のタイプ別にこれまでの結果をまとめると、症状の重い分離分節型で免疫能の低下、増殖因子の産生がより強いことが明らかとなった。
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