心筋組織と血液の音響特性の差を利用して自動的、連続的に左心室腔内面積を測定するAcoustic quantification(AQ)システムと非観血的連続動脈圧測定が可能なトノメトリーを用いると左心室駆出期圧-断面積関係が得られる.この駆出期圧-断面積関係から麻酔中の循環変化をリアルタイムで検討した.腹部大動脈瘤切除再建術症例において、大動脈遮断および大動脈遮断解除時の駆出期圧-断面積関係から収縮末期圧-断面積関係(ESPAR)の傾きを求め、心収縮性の指標とした.また、拡張末期断面積を前負荷の指標とし、遮断前、解除前の変化を検討した.左心室駆出期圧としてトノメトリー法による連続的動脈圧測定を、左心室断面積はTEEのAQによる左心室短軸像断面積を用い、左心室駆出期圧-断面積関係を1平面上にループとして描いた.大動脈遮断時および遮断解除時の駆出期圧-断面積関係、および、イソフルラン、PGE1の影響を検討した.大動脈遮断により後負荷および前負荷が増加し、駆出期圧-断面積ループは右上方へシフトした.一方、大動脈遮断解除によりループは左下方へシフトした.遮断解除時のESPARは遮断時のESPARより38%上昇した.また、拡張末期断面積は遮断時が8±1cm^2、遮断解除時が11±2cm^2と32%増加した.イソフルランIMACでは、ESPARの有意な変化は認められなかったが、前負荷、後負荷の低下が認められた.PGE1 40ng/kg/minでは前負荷の著明な低下、後負荷の低下が認められた.結論として、大動脈遮断解除時は遮断時にも比し、心収縮性が38%上昇しており、前負荷は32%増加していた.AQシステムとトノメトリーを用いて駆出期圧-断面積関係を求めることで術中の心室血管系相互関係を非観血的に推定することが可能であった.
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