研究概要 |
リドカインによる胸部硬膜外麻酔がメタコリンによる気道の収縮に対して影響しないことを報告した。リドカインの血中濃度の影響および気道過敏性との関係を調べるため実験を継続した。 方法: ウサギを用い,ぺントバルビタール麻酔下に気管切開し人工呼吸器で換気した。胸部で硬膜外腔にカテーテルを挿入し,1%リドカイン0.5mLまたは同量の生食を投与した。持続静脈内投与は,リドカインを3mg/kg引き続き200μg/kg/minまたは同量の生食を投与した。気道抵抗,血圧,動脈血酸素分圧,血中リドカイン濃度を測定した。気道の過敏性は,アルブミンにPAF(血小板活性化因子)とカプサイシンを用いて作成し,より人の喘息に類似させた標本を用いた。メタコリンの濃度を0.02,0.2,2%と増加させ,気道内に吸入し,気道収縮の濃度による変化を求めた。 結果: リドカインによる硬膜外麻酔は,生食を硬膜外腔に投与した群と比較し,メタコリンによる気道収縮に差を示さなかった。気道過敏性のないウサギにリドカインを持続静脈内投与すると,生食を投与した群と比較し,2%メタコリンによる気道収縮を抑制した(73±15(cmH20・1^<-1>・sec^<-1>±SD)から50±9(p<0.05))。気道過敏性のウサギに対しても,リドカイン静脈内投与は,生食を投与した群と比較し,2%メタコリンによる気道収縮を抑制した(95±10から71±9(p<0.05))。リドカインの血中濃度は,硬膜外麻酔では1μg/ml以下で,静脈内投与では約5μg/mlであった。 結論: 以上のことから,硬膜外麻酔で作用がはっきりしなかったのは,リドカインの血中濃度による全身作用の違いが考えられた。また,気道収縮の抑制作用は,イリタント受容体の関与を含めた過敏性のあるなしにかかわらず作用するが,その程度には限界があることがわかった。
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