研究概要 |
1)SD系雌ラットを対象とし、体性侵害刺激としてTail-flick test(TF)を用い妊娠末期や分娩直前に誘導される内因性鎮痛に及ぼすCaチャンネル拮抗薬Verapamil(Ver)の鎮痛増強効果について検討した。妊娠前にラット尾に輻射熱刺激を与え逃避潜時を測定し対照値とした。適切な時期に交尾させ妊娠ラットを作成した。妊娠4-5日に全身麻酔下に腰部くも膜下腔にカテーテルを留置した。妊娠7、14、21(ラットの分娩は通常22日)および分娩後7日目にsubeffective doseのVer50μg,100μgおよび200μgをくも膜下に投与し、その前後におけるTF逃避潜時を測定した。妊娠21日目のTF逃避潜時は他の測定時期に比較して有意に延長し、内因性鎮痛の誘導の存在が確認された。一方。Caチャンネル拮抗薬Verは妊娠21日目においてのみ投与量依存性にTF逃避潜時を延長させたが、それ以外の測定時期にてはTF逃避潜時に影響を及ぼさなかった。Caチャンネル拮抗薬Verapamilは妊娠末期に誘導される内因性鎮痛機序との相互作用により疼痛閾値を増強させることが示された(Anesthesiology 1997;87;A653)。 2)くも膜下腔に投与されたα_2-adrenergic agonist,clonidineは局所麻酔薬lidocaineの作用を増強させることが知られているが、徐脈などの循環系に及ぼす影響が問題となっている。循環系に対する影響が少ないα_2-adrenergic agonist,tizanidineのlidocaineの麻酔作用に及ぼす効果を実験的に検討した。SD系雄ラットを対象とし、腰部くも膜下腔にカテーテルを留置した後、lidocaine 50-1000μg,clonidine 0.2-2.0μgおよびtizanidine0.5-5.0μgくも膜下投与によるTF逃避潜時および下肢運動機能を経時的に測定した。全ての薬物は投与量依存性に両測定値を増強させた。また、lidocaineとclonidineおよびtizanidineの間には、循環系に影響せずに相乗的な麻酔効果増強作用が認められた(Anesthesiology 1997;87;436)。今後、妊娠ラットでの効果を検討する予定である。
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