研究概要 |
1. 吸入麻酔薬ハロタン,イソフルランの交感神経β受容体を介する血管拡張反応に対する影響 ハロタン及びイソフルランは,β受容体アゴニストであるイソプロテレノールによる血管拡張作用を濃度依存性に抑制した.一方,アデニル酸シクラーゼを活性化するフォルスコリンや,細胞膜透過型サイクリックAMPであるdbcAMPによる血管拡張作用は抑制しなかった.両麻酔薬はβアゴニストとβ受容体の結合には影響せず,フォルスコリンによる平滑筋細胞内cAMP濃度の増加を抑制しなかったが,イソプロテレノールによる平滑筋細胞内cAMP濃度の増加を抑制した.以上のことから,両吸入麻酔薬はβアゴニストと受容体との結合より後で,なおかつアデニル酸シクラーゼの活性化より前の部位に作用して,β受容体を介する血管拡張反応を抑制するものと推察された. 2. サイクリックAMPとサイクリックGMPによる血管拡張反応に対する吸入麻酔薬ハロタンの作用 ハロタンは細胞膜透過型サイクリックAMPであるdbcAMPによる血管拡張反応に影響しなかった.これに対しハロタンは,ニトログリセリンによる拡張反応を濃度依存性に抑制した.ニトログリセリンは平滑筋細胞内で代謝されて一酸化窒素を生じ,これがグアニル酸シクラーゼを活性化してサイクリックGMPを産生し平滑筋が弛緩するという経路をたどるが,ハロタンがこのいずれの部位を抑制するのかは未だ不明である。
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