研究概要 |
空気自発呼吸下の犬を用い敗血症時の呼吸機能と臓器血流分布の変化を検討した.敗血症モデルは少量エンドトキシン静脈内投与(2μg/kg)により作成した.臓器血流は横隔膜,呼吸補助筋,腎血流,消化管血流をカラードマイクロソフィア法で測定し,肺血流量は熱希釈法で測定した.呼吸機能は呼吸数,一回換気量,胸腔内圧,容量圧曲線から求めた呼吸仕事量を測定した.その他血圧,心拍数,尿量,体温を測定した.エンドトキシン投与後(1)心拍出量は一時的に増加し,その後50%にまで減少した.血圧はエンドトキシ投与後から低下した.(2)呼吸数の増加と呼吸仕事量の増加が認められ,(3)心拍出量が減少したにもかかわらず横隔膜および呼吸補助筋の血流は約3倍に増加した.(4)腎血流量,消化管血流量,尿量は約60%に減少した.以上のことから細菌感染症が認められる時には臨床症状が軽度でも比較的早期から臓器間の血流分布の変化が発生しており,特に呼吸筋に分布する血流増加のために腎臓,消化管が相対的に低潅流状態となっていると考えられる.低潅流状態が持続すれば腎臓,消化管,肝臓などの臓器機能不全が起こり,多臓器不全に発展する可能性を示唆している.今後はこのような状態でどの様な呼吸補助,人工呼吸が適切であるか,どの様な薬物療法が効果的であるかを検討する予定である.
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