研究概要 |
最近の病理学的研究や免疫学的研究により、腎機能の低下する過程で糸球体の構成要素であるメサンギウム細胞の増殖および基質の増加が認められることがin vitro,in vivoの実験で証明されており、メサンギウム細胞の障害と腎機能の関係が注目されている。現在までの筆者らのメサンギウム細胞を用いた研究において、1.ケタミンは、[^3H]-thymidineの取り込みと細胞数の増加を濃度依存性に抑制した。しかし、プロポフォールは[^3H]-thymidineの取り込みには影響を及ぼさなかった。2.ケタミンは細胞内のcAMP濃度を濃度依存性に増加させた。3、ケタミンはIL-1,IL-6やTNF刺激によりメサンギウム細胞の増殖に対すの作用に対して抑制することを確認をしている(Jimi et al.,1997)。さらに、プロポフォールは増殖に関与するカルシウムチャンネルを抑制しないことも確認した(Minami et al.,1996)。現在、これらの結果をもとに抗胸腺抗体を用いてメサンギウム増殖性腎炎モデルを作り、in Vitroの結果を証明を試みている。そこで、アドレノメヂュリン(Segawa et al.,1996)のように循環抑制作用のある蛋白においてもそのメサンギウム細胞の増殖に対する抑制作用を証明した。さらにプロタミンなどの循環抑制作用のある薬剤においてもそのメサンギウム細胞の増殖に対する作用を現在検討し、現在まで増殖に関与するカルシウムチャンネルを抑制することも確認している(Minami et al.,1996)。また、カルモジュリンキナーゼIIなどの燐酸化酵素阻害薬も増殖に関与するカルシウムチャンネルを抑制することも確認している(Tsutsui et al.,1996)。さらに、サイトカインが臨床病態に関与しているとされる透析患者や原発性閉塞性肝硬変の患者におけるケタミンの血中サイトカインの動態にいかに関与しているかも検討している(Segawa et al.,1997) 。今回の結果は、麻酔薬が神経系だけでなく種々の細胞機能に影響していることを示す結果だと考えられる。
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