研究概要 |
1.膀胱癌細胞株を用いた抗CD44抗体の影響の検討。 細胞接着因子の1つであるCD44はいくつかのsplice variantを持ち、悪性腫瘍ではさなざまなexonを含んだCD44変異型を発現している。そこで、膀胱癌培養細胞株であるJ-82とHT1197を用いてCD44機能発現の解析を行った。CD44のvariantであるv6はJ-82では発現していないが、HT1197では高発現している。培養細胞株の液体培地に高CD44v6抗体を100倍希釈で添加して培養し、その増殖形態の変化を観察した。J-82では、コントロール(抗体無添加)と比べて増殖形態は変化しなかった。しかし、HT1197においては、抗体を添加して培養すると、分裂増殖につれて接着機能を失い、培養液中に遊離していくことが観察された。今後は培養細胞をコラーゲンで包埋する事により、細胞遊離を阻害し、細胞発育を詳細に検討する予定である。 2.SCIDマウスを用いたヒト由来膀胱癌実験モデルにおけるCD44の発現の検討。 ヒト尿路上皮癌を用いてSCIDマウス皮下にて継代可能な非浸潤性株UCT-1および浸潤株UCT-2を樹立した。これらの腫瘍において免疫組織化学染色にてCD44 v6の発現をみると、UCT-1では強く染色されるが、UCT-2ではほとんど染色されなかった。このことより、CD44 v6はin vivoにおいても尿路上皮癌の細胞接着に関与していることが示唆された。今後J-82,HT1197,UCT-1,-2をマウス膀胱粘膜下に移植したモデルを用いてin vivoにおける抗体の有用性について検討する予定である。
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