研究概要 |
1. 透析患者における活性型ビタミンD_3(以下1,25D)の生体防御機構における役割 正常ならびに透析患者の末梢血単核球の培養液中に1,25Dを添加することにより単球のHLA-DR抗原(以下DR)の発現は抑制され,一方貪食能は増強された。1,25D欠乏透析患者において,正常群に比し好中球の活性酸素産生能ならびに単球のDR発現量は有意に高く,好中球の貪食能は有意に低かった。透析患者19名に対する1,25D経口投与は,単球のDR発現量を有意に抑制し,また好中球の活性酸素産生能を有意に増強した。しかし好中球の貪食能,リンパ球の幼若化反応には明らかな作用は認めなかった。 2. 1.25Dの泌尿器科悪性腫瘍に対する作用 1) 前立腺癌に対する作用:1,25Dによる細胞増殖抑制効果は4種類の前立腺癌細胞株(PC3,PPC1,ALVA101,ALVA41)の中ALVA41を除く3株においてに認められた。HLA-ABC抗原(以下ABC)の発現はPPC-1を除く3種類の細胞株で発現を認めた。培養液中にIFN-γ(以下IFN)を添加するとPPC-1ではABCの発現が誘導され,他の細胞ではこの発現は増強された。DRの発現は,IFNの有無にかかわらず,これらの細胞には検出できなかった。ICAM-1抗原はALVA41を除く3種類の細胞株で発現を認めたが,IFNにより発現増強傾向を認めた。1,25Dにはこれらの3つの発現に対し,明らかな制御作用は認めなかった。 2) 腎癌に対する作用:ABCの発現は腎癌細胞株KPK-1,SN12C両細胞株で認め,IFNにより増強された。DRの発現はKPK-1細胞には検出できなかったが,SN12C細胞株においてはIFNの存在下でのみ発現を認めた。1,25DにはABCならびにDRの発現に対し,明らかな制御作用は認めず,またどちらの細胞に対しても細胞増殖抑制効果は認めなかった。
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