研究概要 |
【目的】膀胱癌を対象とした遺伝子治療の臨床応用を想定して,導入効率が良く,安全で繰り返し使用できる非ウイルス・ベクターによる膀胱へのin vivo遺伝子導入法の開発を目的として研究を行った。 【方法】カチオニック・リポソーム:陽荷電したリン脂質DOTMAと中性のDOPEの1:1混合物から作製したリポソームをDNAと混和、ラットの膀胱内に注入した。 2.HVJリポソーム法:センダイ・ウイルス(HVJ)の細胞膜融合能と核蛋白質HMG1による核へのDNA輸送能をもたせたHVJリポソームは,金田らの方法(J Biol Chem 264;12126,1989)によって作成し、ラットに膀胱内注入した。 3.パーティクル・ガン:DNAをコートした直径0.5-1.0μmの金粒子を高圧窒素ガスを利用したパーティクル・ガンによってウサギ膀胱粘膜に打ち込んだ。 4.電気穿孔法:DNA水溶液をウサギ膀胱粘膜下に局所注入し、その部分を挟むように針電極を粘膜下に刺入して直流パルス電流(500-1000V,0.1msec)を通じた。 マーカー遺伝子としてはpSV-β-GalactosidaseおよびpCATを用いた。 【結果および考察】カチオニック・リポソームでは、正常膀胱、BBN化学発癌膀胱とも部分的に発現が見られたのみで、繰り返しての投与が必要と考えられた。HVJ-リポソームでは広範囲の膀胱粘膜の表層でβ-galactosidaseの発現が見られ,上皮内癌タイプへの応用が可能と思われる.発現は遺伝子導入後3-5日でピークとなり、少なくとも2週間持続した。パーティクル・ガンでは発現が不均一ではあるが粘膜深層での発現も見られた.電気穿孔法では発現効率はそれほど高くないものの上皮から粘膜下にかけて発現が認められた。後者の2つの方法は内視鏡との組み合わせにより、臨床的な応用が可能と考えられる。
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