研究概要 |
尿路悪性腫瘍における各種癌関連遺伝子群、特に遺伝子修復能を意味するマイクロサテライトマーカーを用いたゲノム不安定性と各種修復関連遺伝子の異常、さらに癌抑制遺伝子の一つであるBRCAl遺伝子の異常の有無と前立腺癌におけるホルモン低抗性機序におけるアンドロゲンリセプター遺伝子の変異について検討し、以下のような結果が得られた。 膀胱癌、精巣腫瘍におけるゲノム不安定性の検索では、10〜20%に異常が認められた。また、これらゲノム不安定性に関与するhMSH2,hMSH3,hMSH6,TGFb receptor typeII,insulin like growthfactor receptor,またアポトーシスと関連するBax遺伝子の検索では、ゲノム不安定性陽性例の約10%にhMSH3,hMSH6,TGFb receptor typeII,Bax遺伝子の変異が認められた。われわれの検討では、散発性癌でゲノム不安定性を示す場合は遺伝性非ポリポ-シス大腸癌と発生機序が少し異なるのではないかと思われた。また前立腺癌における染色体17q21領域のloss of heterozygosity(LOH)とBRCAl遺伝子の検索では24例中4例(16.7%)にLOHが認められ、うち1例にexon13の点突然変異が認められた。また陽性例の妹が55歳で卵巣癌で癌死しており、家族性の素因が考えられた。前立腺癌におけるアンドロゲンリセプターおよび5a-還元酵素遺伝子の異常、ならびにアンドロゲンリセプターexonA領域にあるCAGリピート数につき正常コントロール群、前立腺肥大症群、前立腺癌の3群につき検討した。前立腺癌におけるアンドロゲンリセプター遺伝子の変異はホルモン低抗性となったstageD2症例の6例中1例(16.7%)に変異が認められた。前立腺原発巣に比して、骨などの遠隔転移巣では高率に変異が認められるとの報告があり、ホルモン抵抗性の機序としてアンドロゲンリセプター遺伝子の変異はある程度関連していることが示唆された。なお、5a-還元酵素遺伝子の変異やアンドロゲンリセプターexonA領域にあるCAGリピート数の異常は認められなかった。
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