研究概要 |
妊婦の頚管粘液中の炎症性サイトカイン(IL-1α,IL-1β,IL-6,IL-8)を測定し、頚管の炎症の程度との関係を検討した。多胎や胎児奇形、合併症などのない妊婦239例を対象とし、妊娠10週(n=130)、20週(n=144)、30週前後(n=158)に同意を得て頚管粘液を採取した。独自に開発した綿棒で頚管粘液を採取(平均20mg)し、綿棒を検体希釈液1ml中に入れ振盪し抽出した後、EIAキット(R&D,Systems,Inc.)でサイトカイン濃度を測定した。頚管の炎症の程度を知るために、同時に検体中の顆粒球エラスターゼ(GE)濃度をEIAキット(三和化学研究所)で測定した。これらの測定により以下の成績を得た。1.炎症所見のないGE低値群(<0.72μg/ml,n=306)の頚管粘液検体中のIL-1α,IL-1β,IL-6,IL-8濃度(pg/ml)は各々31.86±3.48(mean±S.E.)、243.53±16.15、141.82±9.43、1934.0±123.7であり、妊娠週数により有意な変動を示さなかった。2.頚管の炎症の増強に伴い、検体中のIL-1α,IL-1β,IL-8濃度は有意に上昇した。すなわち、GE高値群(≧1.78μg/ml,n=21)のIL-1α,IL-1β,IL-8濃度は75.36±19.93、1005.29±238.75、4822.4±633.2で、GE低値群と較べて各々2.4倍(P=0.004)、4.1倍(P<0.0001)、2.5倍(P<0.0001)に増加した。3.IL-6濃度は、頚管の炎症が増強しても有意な変化を示さなかった。 以上の結果から、妊娠時の頚管粘液中には炎症性サイトカインが生理的に存在し、炎症の増強に伴ってIL-1α,IL-1β,IL-8濃度が有意に上昇することを明らかにした。
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