研究概要 |
胎盤における糖輸送の分子機構を解明するために,糖輸送体GLUT1,GLUT3,ギャップ結合蛋白コネキシンの抗体を用いてその局在を免疫組織細胞化学的に解析した.ラット糖輸送体GLUT3に対する抗体はアイソフォーム特異的な合成ペプチドを用いて作製した.ラット胎盤では,GLUT1は胎盤全体にわたって分布したが,GLUT3は母体血と胎仔血の流路が複雑にいりくんだ迷路部にのみ見られた.迷路部では二層の合胞体栄養膜細胞が胎盤関門を形成している.GLUT1,GLUT3ともに合胞体栄養膜細胞膜に多量に存在した.免疫電顕法により,GLUT1は第一層目の合胞体栄養膜細胞の母体側細胞膜と,舞二層細胞の胎仔側細胞膜に局在した.一方GLUT3は合胞体栄養膜細胞の第一層,第二層ともに母体血側の細胞膜に偏在した.またこれら二層の合胞体栄養膜細胞は多数のコネキシン26からなるギャップ結合で結合されていた.以上の結果から,1)母体血側からのこの関門層への糖の取込みにはGLUTlとGLUT3がはたらく;2)二層の合胞体細胞間ではコネキシン26からなるギャップ結合を介して糖が細胞質間を移送される;3)合胞体細胞から胎仔血への放出にはGLUTlがはたらいていると考えられる.ノックアウト実験の結果からも,ギャップ結合が血液組織関門で重要な役割を果たしていると考えられる.また高親和性糖輸送体GLUT3は胎盤関門で極性を持って局在し,母体から胎仔への糖輸送を効率良くおこなうのみならず,胎仔血中のグルコース濃度の安定化にも働いていると推定される.
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