研究概要 |
ヒト重層扁平上皮細胞に感染したヒトパピローマウイルス(HPV)の遺伝子発現を制御する細胞因子を同定するために、まずHPV type31 を用いてtransient expression assayによるHPV promter-enhancerの同定を試みた。その結果HPV long control regionの中央部約260bPのenhancer領域を同定した。続いてこのenhancerに結合する核内蛋白をDNA-protein binding assay(Footprint analysis,Gel shift assay)により解析したところ、癌遺伝子産物APl、未同定の蛋白F1,F2,F5および転写因子Oct-1が結合することが判明した。mutation assayにより、この中でHPVpromoterの転写にcriticalな因子を検討したところ、AP1が最も重要な転写調節因子であることが判明した。続いてraft cutureによりHPV31 genomeをepisome状態で含有する細胞を重層培養し、AP1の局在を免疫組織染色で確認したところ、重層扁平上皮の基底および傍基底細胞層に発現を認めた。in situ hybridization法でHPVの癌遺伝子産物であるE6,E7のmRNAの発現を確認したところ、APlの局在とほぼ一致した基底層、傍基底層に発現を認めた。以上のことからHPVの遺伝子発現には細胞性因子AP1の発現が重要なdeterminantであることが明らかになった。AP1の発現はHPVの細胞種特異性を決定する因子のひとつであると考えられる。さらに我々はlong control regionのより上流に新たなenhancerを同定し、この領域に結合しAP1との共同作用でHPV遺伝し発現を活性化する因子YY1を特定した。以上よりAP1とYY1二つの核内蛋白をtargetにした子宮頚癌の遺伝子治療の可能性が示唆された。
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