研究概要 |
今回の研究では、以下の3項目を柱に、子宮内膜、特に上皮細胞の増殖や分化に対する間質細胞および間質細胞が産生しているサイトカインによる影響と、間質細胞を標的とする子宮内膜症薬物療法の分子機構も検討した。 (1)子宮内膜間質細胞と上皮細胞間のアポトーシル感受性を制御するサイトカインネットワークの解析:我々は、子宮内膜上皮細胞のアポトーシスが子宮内膜間質細胞との接着による抑制されることを発見した(Tanaka et al. 1996発表済).この接着がどの分子との結合によるものかについては、現在解析中にある。一方、細胞接着がアポトーシスを抑制する事実から、上皮細胞と細胞外基質との接着特異性がいかにアポトーシス刺激を制御するかをも解析した結果、特定の細胞外基質との特異的接着がアポトーシスを促進したり、あるいは抑制することを発見した(Tanaka T, Umesaki N et al.投稿準備中)。 アポトーシス感受性を制御するサイトカインとしては、IFNs (Tanaka T, Umesaki N et al.投稿中)、EGF (水野、田中、梅咲ほか:エンドメトリオージス研究会誌1997。(TanakaT, Umesaki et al.投稿中)、TGF-β (TanakaT, Umesaki N et al.投稿中)、IL1-1 (TanakaT, Umesaki N et al.投稿中)、HGF(水野、田中、梅咲ほか:エンドメトリオージス研究会誌1997。Tanaka T, Umesaki N et al.投稿準備中)であることを証明した。 (2)脱落膜化間質細胞と上皮細胞間のサイトカインネットワークの解析:我々の実験系では従来の報告にある脱落膜化現象の再現性に問題点が見い出され、そのために研究の進行が予定よりも若干遅れた。現在も本研究は継続中にある。 (3)子宮内膜症治療薬の直接効果の解析:子宮内膜症治療薬については、現在日本で最も多用されている3薬剤を検討したが、これまでの報告されているような顕著な直接効果は見い出せなかった。我々は何度も条件を変えて再検討を繰り返し、従来の報告では内膜症治療薬の溶解剤によう非特異的現象が薬剤の直接効果として誤って報告されていると我々は結論した。一方で、検討した内膜症治療薬には単独での細胞毒性は検出されないものの、子宮内膜細胞の生理的細胞死現象を増強することを世界で初めて証明した(Tanaka T, Umesaki N et al.投稿準備中)。
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