研究概要 |
Yaichにより報告された(Cancer Research 52,77-83,1992)エストロゲン受容体遺伝子多型がコーカシアンのみでなく、日本人にも存在することをまず検討した。方法はPCRにより増幅した遺伝子を制限酵素Pvu IIで切断することにより、PP,Pp,ppに分類した。150名の本邦婦人をしらべたところ、PP31(20.7%),Pp76(50.5%),pp43(28.7%)であり、コーカシアンとは比率は異なるものの、やはりエストロゲン受容体遺伝子多型が本邦婦人にも存在していた。このエストロゲン受容体遺伝子多型が婦人科疾患の発症に関系があるかを検討した。まず子宮筋腫で手術を行った58例では、PP12例(20.7%),Pp31例(53.4%),pp15例(25.7%)であり、対象群の分布と差がなかった。次いで子宮内膜症56例について遺伝子解析を行ったところPP7例(12.5%),Pp35例(62.5%),pp14例(25.0%)でやはり対象群とその分布に有意差は認められなかった。次いで、子宮体癌について検討した。子宮体癌58例では、PP11例(19.0%),Pp25例(43.1%),pp22例(37.9%)で、対照よりppが多い傾向を認めたが、有意差はなかった。しかし症例の詳細を検討すると、癌の家族歴あるいは本人の腫瘍の既往歴ではどちらもPP,Pp,ppの順に増加する傾向が認められた。癌の進行記分類でも予後のよ Ia期はPPで18.2%,Ppで16%,であったのに対し,ppでは0%であった。又組織分化度でも予後の悪いG2+G3はPP,Pp,ppの順に20.0%,42.9%,40.0%で、PPが少ないという結果であった。以上から子宮体癌はppでその率が高い傾向があり、この群は家族歴、既往歴でも高リスク群であること、またはPP,Pp,ppの順に組織分化度、進行期共に予後不良例がおおくなる傾向を認めた。
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