研究概要 |
bcl-2ノックアウト(KO)マウス(4,7,12週齢)の子宮は、同年齢の正常マウスの子宮に比較して発達が遅延していた。光顕的にはbcl-2KOマウスの内膜腺はほとんど分岐せず、粘膜固有層や子宮筋層は菲薄になっていた。TUNEL染色ではアポトーシスに陥った子宮内膜腺細胞が多く観察され、隣接した腺細胞により貪食されていた。興味あることには、子宮筋層にも平滑筋細胞のアポトーシス像が認められた(Daikoku et al.,MedicalEelectron Microscopy,in press)。このことは以前われわれが報告したごとく(Otsuki et al.,Lancet.1994)、子宮内膜はBcl-2蛋白を増殖期に、子宮筋層は性週期を通じて恒常的に発現することにより、アポトーシスから免れているといった結果を指示するものである。また新たに考案した電顕的TUNEL法を用いて、ヒト子宮内膜における断片化したDNAを定量化した。本法により分泌期の内膜腺細胞にアポトーシスが好発することが証明された(Inoki et al.,J.Histotechnology,1997;大槻,小児外科,1997)。また子宮内膜のアポトーシスを引き起こす刺激の候補としてFasおよびFas Iigandの発現についてヒト子宮内膜を用いて検討した。ヒト子宮内膜でのFasおよびFas Iigandの発現はともに増殖期には弱く、分泌期に強く発現していた。また免疫電顕により、これらの蛋白はともにゴルジ装置、小胞および細胞膜上に観察された。すなわち子宮内膜腺細胞はFasおよびFas Iigandをautocrineすると考えられた(Otsuki,et al.,Endometriosis Today,1998)。
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